入塾式・オリエンテーションで知る、庄内浜
県土面積の約7割が森林である山形県は、沿岸部と内陸部では海に対する親しみ深さや理解度に大きな差があります。今年も県内の様々な地域から30名の子どもたちが集結し、山形の海を学び・楽しみ・考える「やまがた海洋塾」が始まりました。さらに初の試みとして、現役の小学校教諭4名も参加し、子どもたちと同じ体験をしてもらうことで県内における海洋教育の更なる普及と発展をともに考えました。
入塾式では塾長を務める山形県立加茂水産高校元校長の佐藤淳氏より、庄内浜の文化や歴史、今回の海洋塾の目標が説明されました。
また、オリエンテーションでは、海をテーマとしたチーム協力型のクイズが行われ、子どもたちはこれから一緒に冒険する仲間たちと仲を深めました。
先人たちの教えを学ぶイントロダクション
海に出る前に、まずは庄内浜の地形や特徴などを鳥海山・飛島ジオパークの畠中氏から教わりました。
庄内浜の海岸線の長さは日本で2番目に短いにもかかわらず、日本有数の砂丘があることや130種類以上にも上る豊富な魚種が水揚げされることが紹介され、子どもたちはこれまで知らなかった地元の海の魅力に興味津々。さらに庄内浜で昔から伝わっている漁法や、旬の魚を美味しく食す食文化に触れ、先人たちの智恵や教えが今もなお脈々と受け継がれていることを学びました。
庄内浜の地形と鳥海丸のお仕事体験!
イントロダクションで学んだ庄内浜の地形を今度は海の上から実際に自分の目で見てみましょう!
子どもたちはライフジャケットを着て、漁業実習調査船 鳥海丸に乗り込みました。その大きさと迫力に子どもたちの胸も高鳴ります。大きな汽笛とともに出航すると、陸地がどんどん遠ざかっていき、普段は見ることのできない「海からの陸の様子」を観察しました。さまざまな形の船や、高く広大な庄内砂丘、沖に行くにつれ鮮やかになる海の色など、初めての体験に目を輝かせていました。
昼食は船員さん特製のカレーをいただきました。長い船上生活でも曜日感覚を失わないように決まった日にカレーを食べるという船乗り独自の工夫を教わりながら、海風と綺麗な風景をスパイスにして美味しそうに頬張りました。
また、特別に操縦室をはじめとした船内の様々な設備を見学し、船員たちの仕事を体験しました。
庄内浜の知恵と工夫を学ぼう!
全国的に問題となっている藻場の減少は山形県でも深刻な課題として解決の糸口が探られています。そのひとつとして庄内浜では、自動車の保有率が高い山形県の地域性を活かした全国的にも珍しいシートベルトを利用した藻場づくりを行っていました。シートベルト藻場はもともと庄内浜の特産であるハタハタの産卵場所を確保するためにつくられました。庄内浜でのハタハタの漁獲量は以前の1割程に減少しており、地域の食文化が喪失する危機に直面しているなか、地域の人々の智恵と工夫によって文化と生態系を未来に受け継ごうとしていることを学びました。
海へのそなえと伝統漁法をダブルで体験!
海は私たちに豊かな恵みをもたらす反面、命にかかわる危険な面も持ち合わせています。そこで、伝統漁業と海へのそなえを同時に体験しました。
伝統漁業の「磯見漁」は古くから行われている漁法のひとつで、小舟の上から箱眼鏡で海中を覗き、特殊な道具で貝類や海藻を採取します。子どもたちも漁師さんに倣って箱眼鏡で藻場を見たり、「なさし(魚刺し)」という道具で海底の貝類を採るなどして、伝統漁業を体感しました。磯見漁は自分達が食べたり売ったりする量だけを獲り、海に出来るだけ負担をかけないよう受け継がれてきた先人たちの「アイデア」の一つです。
海へのそなえでは、ペットボトルを使って海面に浮く方法や、ライフジャケットを着用して事故を未然に防ぐことを学習しました。