山形県の海、庄内浜で今、大きな変化が起きています。海水温の上昇などの影響で、これまで獲れていたスルメイカなどの魚が減少し、その一方で「マグロ」の水揚げが増えているのです。
変化する海とどう向き合うか県立鶴岡中央高校で「マグロ学習会」が開催されました。
庄内浜の異変と、新たな希望「マグロ」
「今まで獲れていた魚がいなくなりました。海が温かくなって、魚たちが住めなくなっているのです」 そう語るのは、海と日本プロジェクトin山形の小野愛美さん(合同会社Maternal)。 近年、気候変動の影響で庄内浜の漁獲量は減少傾向にあり、食卓でおなじみだった魚の価格も高騰しています。
その一方で水揚げが急増しているのが「マグロ(クロマグロ)」です。近年では庄内沖で200キロ近い大物が上がることもあり、新たな「庄内浜の魚」として期待が高まっています。
地元の高校生に、地元の海で起きている変化と、新しい食材の魅力を知ってもらいたいーー。 そんな思いから、県立鶴岡中央高校で「マグロ学習会」が開催されました。
講師を務めたのは、鶴岡市内で庄内浜の料理を提供する「庄内ざっこ」の店主、齋藤亮一さんです。 齋藤さんがこの日、生徒たちに用意した食材は、なんと「マグロの心臓」でした。
「捨ててしまうのはもったいない」未利用部位を美味しく
普段私たちが口にする身の部分だけでなく、マグロには心臓や胃袋、白子など食べられる部位がたくさんあります。しかし、現状ではその半分以上が捨てられてしまっているといいます。
「しっかり調理すれば美味しく食べられる。命をいただく上で、食べられるところを捨てるのはもったいないですよね」と齋藤さん。 学習会では、普段は市場に出回らない希少部位を使った以下のメニューが振る舞われました。
・胃袋の夏野菜煮込み ・胃袋の酢味噌がけ ・心臓の竜田揚げ
高校生たちの反応は?
恐る恐る口に運んだ生徒たちですが、その味にびっくり。 「マグロと言われないと分からない。食べやすくて美味しい!」 「温暖化で獲れなくなった魚もあるけれど、新しく獲れる魚もある。そういったものを自分たちもどんどん取り入れていきたい」 と、変化をポジティブに受け止める感想が聞かれました。
10年後、100年後の海のために
海の変化は止められないかもしれませんが、私たちの「食べ方」や「捉え方」は変えることができます。 齋藤さんは最後に生徒たちへこう語りかけました。 「海はどんどん変わっています。今獲れるマグロも、10年後にはいないかもしれない。だからこそ、今ある資源を大切に、美味しく食べてほしい。100年先まで庄内浜の魚食文化が続くように、私たちが伝えていければと思います」
庄内浜の救世主となるか、海の変化を「ピンチ」で終わらせず、新しい食文化を育む「チャンス」に変えていく取り組みが始まっています。