世界初の繁殖成功をはじめ、挑戦の積み重ねが「クラゲ展示世界一」の水族館を支えています。来春のリニューアルでどんな新しい出会いが待っているのか、期待が高まりますね。
鶴岡市立加茂水族館(奥泉和也館長)で進められているクラゲの繁殖研究が順調に成果を上げ、飼育種類は過去最多の88種に達しました。来春予定されているリニューアルオープンに合わせて、展示種類を100種まで増やすことを目標にしています。
同館では14人のスタッフが国内外の沿岸でクラゲを採取し、繁殖研究を重ねています。今年7月には「フクロクジュクラゲ」の世界初となる繁殖個体を展示しました。福山大学や新江ノ島水族館などとの共同育成で誕生したもので、南方系の希少なクラゲです。名前は七福神の「福禄寿」に由来しています。
さらに台湾から導入した「レッドクロスジェリー」、メキシコ北部に生息する「メキシカンマッシュルーム」など、この1~2年の間にも複数種の繁殖に成功。加茂水族館ならではの多彩な展示につながっています。
一方で、繁殖の過程には困難も多いといいます。受精卵からポリプまでは育っても、その後クラゲに成長する前にうまくいかない例が少なくありません。海水温や塩分濃度、餌の種類など条件を細かく調整する必要があるためです。
担当スタッフの玉田亮太さん(35)は「クラゲは水温や水質に非常に敏感で、とても繊細な生き物。試行錯誤の連続ですが、リニューアルオープンには100種類をそろえたい」と語ります。現在は「ハブクラゲ」「ヒメアンドンクラゲ」「クロメクラゲ」「ハナガサクラゲ」などの繁殖にも挑戦中です。
同館は11月から来年3月末まで休館し、設備搬入や展示準備を行います。建設用シートも外れ、新しい館の外観が姿を見せ始めました。来春のリニューアルに向け、全国から注目が集まりそうです。