鶴岡市の加茂水族館にあるレストラン「沖海月」で料理長を務める須田剛史さんが、このほど本マグロを使ったカラスミ作りに成功しました。須田さんはこれまで庄内浜で獲れたボラを使い、約5年前からカラスミの試作を続けてきました。昨年には商品化にこぎつけ、ふるさと納税の返礼品や期間限定メニューとして提供されてきましたが、今回は新たに本マグロでの挑戦が実を結びました。
カラスミは、魚の卵巣を塩漬け・塩抜きし、天日干しなどで乾燥させた高級食材で、ウニやこのわたと並ぶ三大珍味のひとつです。今年春、県庄内総合支庁水産振興課が「近年漁獲量が増えている本マグロからも作れないか」と須田さんに相談し、6月から試作を始めていました。
庄内沖では本マグロの漁獲が5月下旬から7月上旬に多く、漁獲枠が拡大された今年は鶴岡市だけで44トンと、昨年の倍に増えました。卵巣は通常、煮付けなどで自家消費される程度で、廃棄されることも少なくありません。こうした“未利用資源”を活用する取り組みとしても注目されています。
完成した本マグロのカラスミは、ボラのカラスミが鮮やかな黄色をしているのに対し、茶褐色で濃厚な味わい。生ではねっとりとした舌ざわり、炙ると香ばしさと粒感が増し、旨みが一層引き立つといいます。試食した県水産関係者からも「廃棄されていたものを活用できるのは大きい」と高く評価されました。
須田さんは「アミノ酸が強いため発酵が進みやすく、完成までの期間も短かったのだと思います。これからは卵巣の大きさなど条件を変えて試作を重ね、来年には商品化を目指したい」と話しています。
庄内浜の恵みから生まれた新しい珍味。これまで捨てられてきたものに価値を見出す発想が、地域の食文化をさらに豊かにしてくれそうですね。